Winning Heroine

日本唯一(たぶん)の女子スポーツ漫画・アニメ特化blog。

ウマ娘 ROAD TO THE TOP -すべてのウマ娘に物語がある

日本唯一(たぶん)の女子スポーツ作品専門ブログ『Winning Heroine』へようこそ。

普段は作品紹介などがメインの当blogですが、たまには単発で感想エントリというものをやってみようかと思った次第です。

※未視聴の方は若干ネタバレ的要素を含みますのでご注意ください。

↑ランキング参加中

今週もランキング3位獲得!

【目次】

概要

昨日4/16にYouTubeの「ぱかチューブっ!」内にて配信アニメとして公開された『ウマ娘 ROAD TO THE TOP』について。

ⒸCygames

ウマ娘の新作アニメ「ROAD TO THE TOP」第1話 配信10時間余りで視聴70万回 - 競馬 : 日刊スポーツ

公開されるやいなや、各所で作画や熱量の多さ、《山本昌》氏の起用や白熱のレースシーンなどで話題を呼んでいるわけですが。

blog主としては、敢えて少し違った視点から今作を注視してみたいと思っておりまして。


www.youtube.com

脇役が主役!?

今回の『ウマ娘 ROAD TO THE TOP』において主役を張る【ナリタトップロード】ですが、モデルとなった史実の競走馬での成績に関していうと、実は一番グレードの高い重賞競走「GI」における勝ち鞍は、"1勝"にとどまります。

ⒸCygames

公式サイトでのプロフィール紹介にも、「主人公っぽいのになぜか脇役におさまりがち。」と説明されています。

もちろん、多くの重賞で何度も優勝争いを演じ、間違いなく名馬といえる競走馬ではあるのですが、GIで7勝を挙げて"世紀末覇王"と称された【テイエムオペラオー】を差し置いて主役に抜擢された今作に、Cygames、ひいては『ウマ娘』の矜持が表されていると思うのです。

 

つまるところ、

すべてのウマ娘(=競走馬)に物語がある

というテーマを内包している、それが「ウマ娘」であり。

誰もが主役になることができ、自分が「推し」として応援するキャラクターを例外なく輝かせることができる、というメッセージが強烈に差し迫ってくるのです。

 

例えば【ケイエスミラクル】や【ユキノビジン】といった、GIを一度も勝利したことがない競走馬たちもゲーム内『ウマ娘 プリティーダービー』に参加しています。

他にも著名でもっと戦績を残した競走馬たちもいると思うのですが、様々な理由で脚光を浴びにくかった、そうした隠れた名馬たちにスポットライトを当ててくれたのが【ウマ娘】というコンテンツではないでしょうか。

umamusume-stage.com

今年1月に公演が行われた『舞台 ウマ娘』においても、【ケイエスミラクル】は非常に重要な役として登場したわけですが、blog主自身も、競馬に詳しいわけではなかったため『ウマ娘』に触れなければ、彼女のことは知らないままで終わっていたと思います。

陽の当たらなかった、知名度の低い競走馬にも光を当てる、『ウマ娘』の魅力がそこに確かに存在するのでした。

モブウマ娘、観客の描写

競走馬の世界というのは過酷で、中にはデビューすらできず去っていった馬たちも存在します。

私たち人間社会においても、芽が出ないままくすぶっていたり、社会にうまく適応できず世間から「お荷物」扱いされている、そんな経験をされている方もいらっしゃるかもしれません。

かくいうblog主=私も、不登校や引きこもりやニートを経験してきたことのある人間であり、社会の中で常にもがき続けながら生きてきたわけですが。

 

しかし、『ウマ娘』の中でも特筆すべき要素として挙げられるのは、「すべての競走馬たちへ注がれる温かい視線」ではないかと思うのです。
今回の「ROAD TO THE TOP」における"モブウマ娘"たちの描かれ方などを見ても、それは明らかです。

ⒸCygames

ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』に登場しない競走馬たちの名前がちゃんと存在しており、実況でも名前が呼ばれます。

ⒸCygames

また、トレセン学園の多くの生徒たちが集う食堂でのシーンでは、ゲームに登場しない名前も判然としないキャラクター達であっても、きちんとその表情が描かれています。

ⒸCygames

また、周りで「見守る者」たちである観衆たちの表情も省略されることなく、しっかりと描かれています。

ⒸCygames

観客の豊かな表情!

ⒸCygames

例えば、アニメ『ウマ娘』1期11話のシーンなどでも垣間見える、観客の豊かな表情というのは、同じ喜び方でも皆一様ではなく、抱き合う者、涙するもの、感動するものなど様々で、このあたりの描写というのが『ウマ娘』全体を貫く美学と言いますか。

ⒸCygames

観客一人一人が個性を持ち、尊厳があり、そしてその方たちにも物語があるのです。

人気や戦績は劣っていたとしても、「存在そのものに価値がある」。
モブウマ娘、観客とて「誰一人取り残さない」そんな決意を感じ取れるのです。

敗者にも注がれる温かい眼差し

通常、多くのスポーツは勝者にスポットライトが当てられ、負けた者を顧みることはそれほどありません。

それはスポーツアニメにおいても同様で、敗者を大きくクローズアップする場面というのは珍しいと思います。

ⒸCygames

しかし、アヤベさんこと【アドマイヤベガ】の冒頭での弥生賞のシーン。
敗れたにもかかわらず、画面いっぱいに表情がアップで描写され、OPへとつながっていきます。

ウマ娘』の世界も、例え善戦しても2位以下は「負け」。

日本社会では、残念ながら一度レールを外れたり、失敗した人が再挑戦しにくい社会構造といわれています。
幸い『ウマ娘』では、敗れても次のレースでリベンジできる機会が与えられます。

ⒸCygames

皐月賞での【ナリタトップロード】の大写しにされる敗北の表情。
しかし、そこには単なる"悲哀"という感情だけでは説明できないものが湧き上がってくるのです。

クラシックレースは3冠と言われるように、3つのレースが存在します。
もし、これがたった一つのレースであったなら、もっと絶望的な表情を見せていたことでしょう。

一つ目を取ることはできなかったけれども、しかし、次のレースでは必ず、といった決意も見て取れる気がします。

尊厳をもってこのレースに挑んだ敗者に対する敬意というものが、この敗者への表情の描写からひしひしと伝わってくるような気がする、そんな『ROAD TO THE TOP』。

2話以降の「敗者」たちのリベンジに期待しつつ視聴していきたいと思います。

「弱きもの」たちへのエール

現代社会は効率や合理性ばかりが重視され、それに見合わない者たちは容赦なく切り捨てられていきます。

blog主自身も、そうした社会の中で苦しんできた経験が多くあり、いわゆる「メインストリーム」で活躍するキャラクターより、どちらかというと「苦労人」とか、「日陰者」的なキャラクターに惹かれたり共感することが多かったりするわけでして。

ナリタトップロード】という、失礼な言い方かもしれませんが、超一流馬とは言い切れなかった競走馬を「主役」に持ってきたという時点ですでに興味が湧いておりました。

ROAD TO THE TOP』には、弱者や敗者たちに対する応援歌、熱いエールを届ける、そうしたテーマが作品の中に(はっきりとは見えませんが)少なからずある気がするのです。

先ほど取り上げた「モブウマ娘」「観衆」「敗者の表情」そうした箇所というものに対するエネルギーの注ぎ方は、他の作品とはちょっと一線を画す仕上がりになっていると感じます。

それが意図するものは何なのか___と考えた時、自分自身のこれまで置かれてきた経験などとリンクして、より鮮明に感じたメッセージ。

それが、「誰もが主役になれる

そう、【ナリタトップロード】のように、あなたもなることができる____

 

おまけ

アニメ放映後にTwitterにて公開された、『白聖女と黒牧師』のコミック原作者である《和武はざの》氏による【ナリタトップロード】絵。

実は、『白聖女と黒牧師』の7月からのアニメ化が決定しており、作品内で《ヘーゼリッタ》のCVを担当するのがトプロ役《中村カンナ》さんだったりします。
(ご本人もしっかりリツイートで反応していらっしゃいました)

個人的に『それでも歩は寄せてくる』で主役を演じるなど成長著しい《中村カンナ》さんの演技にも注目しております。


www.youtube.com

 


4/15の通常エントリ「2023年4月前半ダイジェスト」も女子スポーツ関連作品情報満載でお送りしております。

こちらも興味があればぜひ。

winning-heroine.hatenablog.com