女子格闘技を扱う作品は一昔前と比べれば少しずつ増えてきたように思える気がしますが、ここ数年は特に現実の世界においても、SNSにおける「#筋トレ女子」のトレンドのように、「可愛い」<「カッコいい」という価値観の女性が増えてきたことも要因の一つではないかと思います。
庇護を受ける立場からの脱却といいますか、「自立した強い女性像」にあこがれを抱く女性たちが、社会を少しずつ変えていく原動力になっている現代。
男性優位といわれ続けた日本社会も彼女たちの行動力によって変わっていくきっかけになっていくような気がします。
今回のエントリは、同人誌で発表され、電子書籍でも販売されている女子ボクシング漫画「マグナムリリィ」をご紹介。
実はこの作品、当初は講談社のWEB漫画アプリ「マガジンポケット」にて2017年~連載されていたのですが、作者さんの体調不良により2年ほど休載となっておりまして。
結局、2020年2月にあえなく連載終了の告知があり、以降はpixivにて掲載が続けられていたわけなのですが。
2021年5月、メロンブックスにて同人誌として頒布されることとなったのでした。
pixiv版からの加筆修正はもちろん、描き下ろしやラフ画など、おまけ要素も追加。
◆簡単なあらすじ
失恋した少女・緋口百合は、悲しみと怒りをゲームセンターのパンチングゲームにぶつけていた。すると、それを見ていたボクサーの女性・ウィンディに声をかけられ、パンチングゲームで勝負することに。
(メロンブックスの作品詳細ページより引用)
「女子ボクシング」を扱った珍しい作品ということで、過去の作品で思い浮かぶのは『ライスショルダー』でしょうか。
もっとも、今回紹介する「マグナムリリィ」は、ヘビー級のヒロインを扱ったライスショルダーとは毛色が異なるわけですが。
集中線を効果的に使ったスピーディーな試合シーンに思わずこちらも熱が入ります。
作中に登場するキャラクターも、飛びぬけて筋肉隆々というわけでもないため、スポ根ではあるのですが、爽やかさを感じる作風。
ヒロインの「百合」は鉄砲百合の花を意識して描かれたと、作品の巻末のラフ画で語られていますが、タイトルの「リリィ=百合」はいわゆる[女性同士の恋愛=百合作品]の暗喩にも受け取れそうです(今後の展開に期待)。
脇を固める登場人物も、個性あふれる魅力的な面々。
また、ボクシングを知らない読者でも基本の構えとパンチの種類について解説されるので、知らない間にボクシング通になっているかも。
作中でもヒロインの百合が「ボクシングって男性のスポーツだと思ってました!!」と語るシーンがあるのですが、そういった既成概念を振り払っていけるような勢いを感じさせます。
かつては南海キャンディーズの「しずちゃん」こと、山崎静代さんも女子ボクシング選手としてオリンピックを目指したことでも知られていますが。
アマチュアの場合は、ポイント制で有効打の多さを競うため、KOを狙うプロボクシングとはまた違った魅力があるようです。
(伝統派空手とフルコンタクト空手の違いにも通じる)
個人的なエピソード
当初メロンブックスさんで紙の同人誌を購入したのですが、初版に落丁があったため交換対応になり、作者様と直接やりとりさせていただく機会がありまして。
後日交換品が届いた際、なんとご丁寧に名前入りでメッセージペーパーが同封されておりました。
なかなかこういった機会はないので、貴重なものをありがとうございました!
※現在メロンブックスで販売中の同人誌は改訂版となっているため落丁は修正されています。
同人誌版は通常のコミックよりも判型が大きいため、より迫力が増してリアルに感じられる点も嬉しいですし、2巻以降も期待しつつ、今後の「マグナムリリィ」を見守っていこうと思っております。
おまけ(作者さんのTwitterより)
1巻の表紙制作中に色替えで遊んだんですが、
— 阿部伶/リリィ①配信・委託中 (@ReiAbe_) May 13, 2021
やっぱり百合は赤だな…と思いました。
楽しかったので2巻以降もやれたらいいです! pic.twitter.com/JuAWCZockF